PROPERTY / POPULATION
人口が減る国で、住宅価格が上がる街はどこか
2025年国勢調査の速報では、日本の人口は2020年比2.5%減り、市町村の90.6%が人口減少となった。それでも住宅価格は一律には下がらない。人口、世帯、駅距離、取引件数を重ね、価格を分ける構造を考える。
日本の人口が減るなら、住宅価格も全国で同じように下がる。そう考えると分かりやすい。しかし、実際の市場は一枚の下り坂にはならない。人が減る県の中でも、仕事、学校、病院、駅に近い場所へ需要が集まり、同じ地域の中で価格差が広がるからだ。
2025年国勢調査の人口速報集計によると、2025年10月1日の日本の人口は1億2304万9524人。2020年から309万6575人、2.5%減った。全国1719市町村のうち、人口が増えたのは161市町村、減ったのは1558市町村で、減少した割合は90.6%に達する。しかも、全市町村の62.4%では減少率が5%以上だった。これは確定値ではなく、市区町村から提出された要計表による速報値である。
一方、人口が減った場所でも住宅価格が上がる例はある。Economic Loop Labの試験集計で、中古マンションの㎡単価中央値を2024年4–6月期と2025年4–6月期で比べると、大阪府、福岡県、静岡県はいずれも上昇した。国勢調査では2020年から2025年までに、大阪府は0.8%、福岡県は1.0%、静岡県は4.5%人口が減っている。人口減少と価格上昇は、同じ地域で同時に起こり得る。
ただし、ここで因果関係を決めてはいけない。人口増減は5年間、中古マンション価格は1年間の比較で、対象期間が異なる。価格集計も都道府県単位であり、市区町村ごとの上昇を示したものではない。並べた数字が教えるのは、『人口減少率だけでは住宅価格を説明できない』という次の問いまでである。
価格を分ける一つ目の鍵は、人口より世帯である。人口が減っても、単身化や世帯の小型化が進めば、必要な住宅戸数は同じ速度では減らない。2025年国勢調査の速報表には、市区町村別の人口だけでなく、世帯数と2020年からの増減率も収録されている。人口が減り、世帯が増える地域と、両方が減る地域を分ける必要がある。
二つ目は駅までの距離、三つ目は取引件数だ。県全体の中央値が上がっても、駅近の取引が増えただけかもしれない。反対に、遠距離帯の取引が減ると、売れた物件だけで作る中央値は市場全体より強く見えることがある。価格と件数を一緒に置き、駅距離帯ごとの構成変化を確認しなければならない。
外国人人口も、全国総数より居住地の偏りが重要になる。働く場所、学校、交通、住宅の選択が特定の都市へ集まれば、日本全体の人口減少と別の方向へ地域需要が動く。ただし、人口速報と在留外国人統計は定義と時点が異なるため、同じ数字として混ぜず、別系列として重ねるのが安全だ。
最終的に見たい図は、横軸が市区町村の人口増減率、縦軸が中古住宅・中古マンションの㎡単価変化率、円の大きさが取引件数、色が駅距離帯である。さらに世帯数の変化を切り替えられれば、『人は減ったが世帯は増え、駅近価格は上がった』『人口も件数も減ったのに、少数取引で中央値だけ上がった』という違いを分けられる。
現在のProperty Signalsは、利用条件を確認した公的な公開情報を、都道府県・物件種別・駅距離帯・中央値・件数に整理した試験版である。まだ市区町村単位の価格を持たないため、この完成図を描いたとは言わない。まず都道府県と駅距離帯で構造を見て、比較可能な市区町村集計が整った段階で円グラフ型の散布図へ進む。人口減少を一つの結論にせず、どこへ需要が細く集まっているかを測るための入口にする。
人口減少と中古マンション中央値を別期間で並べる
| 都府県 | 人口増減 2020–25 | 2024-Q2 中央値 | 2025-Q2 中央値 | 価格変化 | 取引件数 旧→新 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | +1.4% | 100.0万円/㎡ | 106.0万円/㎡ | +6.0% | 4,448→4,085 |
| 大阪府 | −0.8% | 47.1万円/㎡ | 52.0万円/㎡ | +10.3% | 1,863→1,885 |
| 福岡県 | −1.0% | 38.6万円/㎡ | 40.0万円/㎡ | +3.7% | 671→665 |
| 静岡県 | −4.5% | 20.0万円/㎡ | 24.0万円/㎡ | +20.1% | 138→132 |
人口増減は国勢調査の2020–25年、中古マンション価格はProperty Signalsの2024-Q2→2025-Q2で期間が異なります。価格は都道府県、全駅距離・全面積帯の中央値です。因果関係や市区町村別価格を示す表ではありません。
次の散布図に必要な5系列
| 系列 | 図での役割 | 読み違いを防ぐ確認 |
|---|---|---|
| 人口増減率 | 横軸 | 速報値か確定値か、境域変更 |
| ㎡単価変化率 | 縦軸 | 物件種別、比較期間、中央値 |
| 取引件数 | 円の大きさ | 少数取引と欠測 |
| 駅距離 | 色 | 徒歩・バス表記と距離不明 |
| 世帯数・外国人人口 | 切替・補助線 | 統計の定義と基準日 |
現行のProperty Signalsは都道府県単位です。市区町村版は、同じ期間と定義で結合できることを確認してから公開します。
PRIMARY SOURCE
一次資料から一言
161市町村(9.4%)で人口増加、1,558市町村(90.6%)で減少
この話のポイント
- 国勢調査の確定値公表後の市区町村人口・世帯数の改定
- 同一市区町村・同一期間で比較できる中古住宅と中古マンションの㎡単価
- 駅距離帯ごとの中央値、取引件数、距離不明率
- 在留外国人統計と国勢調査の定義・基準日をそろえた補助系列
参照資料
本記事は公開情報をもとにした観測メモであり、投資・融資・法律上の助言ではありません。